ANDADURA

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2019.2.1

何恍惚しとんねん

早くも2月。
本日は革が届く。数日前に失敗したと連絡をもらっていたブラウンの革。

「見てびっくりしないでね。」と革屋さんが言っていたので、
覚悟はしていたけれど、勿論びっくりする。

表面塗装もせず、顔料も吹き付けしない、素上げの革には全てが出る。
僕が今回ビックリしたのは、あまりにも多くのものが出ていたからで、
革屋さんも、ほんといろんなものが出過ぎですよね。
とおっしゃっていた。

現在ANDADURAの革は栃木レザー(タンナーさん)のベースを
革屋の佐藤さんに加工・仕上げを行ってもらい、まぁオリジナルの革を
作ってもらっている。

今回の失敗は前回のキャメルに続いての2連続で、
安定的に失敗するという事は、失敗の原因をつきとめるのに、もってこいなので、
革屋さんとじっくりお話をする。
そして、今回の革を見る前に、次からはベースの革を変えようと話し合っていた。

そこで、本日の革の到着である。
まぁ、たくさん出ておりました。あらゆるものが。
革の傷やスレや、しわなど、いつものものに加え、おそらくタンナーさんの
やっつけ感や、革屋さんの気合いやなど諸々、これでもかってくらい、見えた。
革のベースを変えるしかないな、と思うよりも、
そんないろいろなものを見て、美しいなと感じる自分がいる。

前回のキャメルの革は染料ムラが大きな失敗要因で、それを見ても、
使える部位が少ないな、とか、革足りなくなるから追加で頼まなきゃな、
などど現実問題を考えていたけど、
今回は、諸々を含めても「あぁ、綺麗だな。」と素材に吸い込まれているのだ。
銀河系の写真を見ているような、感覚で革を眺める。

そして、なにやら、自分が幸福感を感じている事に気がつく。

んっ、失敗した革を見て、美しいと思う自分の感性に幸福感を感じてんのか?
と自分に突っ込んでみると、どうやら違うらしく、
単純に、美しさと幸福感はすごく近い場所にあるらしい、という事に気がつく。

今回のブラウンの革は、凄い体験をさせてくれたと思う。
まぁ、失敗は失敗なので、痛手(失敗革も全て買りますので)をこうむった訳だけど、
そんな事を忘れるくらいの、ぶっ飛び体験でした。

仕事中に何恍惚しとんねん。と言われると、
顔を赤らめて、照れることしかできないけど、

一枚の革に世界を見。
一片の染料ムラに天を見る。
汝の掌に無限を据え、
一時の中に永遠を見よ。

ウィリアム・ブレイクの詩が降りてくるような、
そんな革でした。

まぁ、仕事中に何恍惚しとんねん、って話なんですけど。
2019.2.1 | note
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